【アルゼンチンの未来】ハビエルミレイ大統領の光と影
Contents
2024年末から、新しいトランプ政権への移行に向けて世界中の様々なリーダーがピックアップされていますが、アルゼンチンのミレイ大統領はその中でもとりわけ一気に世界中で知名度を高めています。
青いタンゴ礁について
運営者: 青いタンゴ礁編集チーム
経験: アルゼンチン在住歴10年以上、完全移住してから5年以上。
アルゼンチンの文化、タンゴ、ブエノスアイレスの暮らしなどを現地から生発信。
目的: アルゼンチンの魅力を日本語で伝え、文化交流の足がかりとなりたい。
掲示板: 誰でも大歓迎!
123年ぶりにアルゼンチンの財政赤字を解消させており、省庁の半分を廃止し支出を31%減少、税金の9割を廃止させた結果GDPは-3.8%から+5.5%に成長しました。
彼自身は、「私は政治家ではなく、経済学者である」と豪語しており、大統領選挙の頃からアルゼンチンの経済的な側面にフォーカスしており、だいたんなアプローチとしてはアルゼンチンペソを廃止して、米ドルを基軸通貨にすると言って世界を驚かせました。(現在ではまだアルゼンチンペソが使われています)
この記事では、青いタンゴ礁ならではの視点からミレイ大統領の光と影、また視点を変えた光と影に迫っていきます。
青いタンゴ礁
青いタンゴ礁は、アルゼンチン生まれのアルゼンチン人、日本生まれのアルゼンチン人、日本生まれの日本人の三人のチームで運営されており、これら三者の視点からみるアルゼンチンの今を考察していきます。
ピンクタイトとミレイ大統領
アルゼンチンは幾度となく経済危機やインフレ問題に直面してきました。
近年では2010年代以降の左派・右派の交代を経て、2023年に就任したハビエル・ミレイ大統領は、通貨のドル化や国家の小さな政府化を掲げる急進的なリバタリアンとして世界の注目を集めています。
一方、ラテンアメリカ全体では2000年代から「ピンクタイド(Pink Tide)」と呼ばれる左派的潮流が台頭し、社会福祉の拡充や反米感情の高まりによって支持を得てきました。
アルゼンチンでもキルチネル政権(ネストル・キルチネル、クリスティーナ・フェルナンデス・デ・キルチネル)を中心に、この流れが色濃く反映されてきた歴史があります。
社会福祉の拡充などで最も顕著なのが、すべての病院無償化でしょう。
アルゼンチンは世界で唯一、すべての人類に対して病院を無償化しており、それはもちろん外国人であっても旅行者であっても、無国籍者であっても変わりません。
アルゼンチンで出産すると、その子供とお母さんにも永住権が与えられますので、わざわざアルゼンチンの病院で出産にくる外国人もたくさんいるほどなんです。
ハビエル・ミレイ大統領の政策
実際彼の政策は、これまでのピンクタイド政策から見ると180度反転したような政策を掲げており、やはり反発する市民も一定数存在していました。
項目 | ハビエル・ミレイの政策 | ピンクタイド |
---|---|---|
政府の役割 | 小さな政府・規制緩和 | 大きな政府・社会福祉の拡充 |
通貨・金融政策 | ドル化・中央銀行の機能縮小・廃止論 | 独自通貨・通貨管理を通じたインフレ抑制 |
社会保障 | 大幅な公的支出削減 | 公共支出を増やし、医療・教育・雇用の拡充 |
外交姿勢 | 米国との連携重視 | 反米・多極外交路線の強調 |
経済の方向性 | 民間主導・自由市場に重点 | 国有化・保護主義政策で国内産業育成 |
経済政策:小さな政府・ドル化構想
- 「通貨のドル化」:アルゼンチン・ペソを廃止し、ドルを公的な通貨として採用する案を検討。
- 「大型減税と歳出削減」:財政の均衡を目指すため、社会福祉の見直しや公的部門の大幅削減を主張。
- 「反中央銀行」:中央銀行の廃止に言及するなど、国家の通貨管理を最小化し、自由市場主義を徹底する立場を取る。
社会政策:自由主義的かつ保守的要素も
- 経済的にはリバタリアンの側面が強いが、一部では既存の保守的価値観にも親和的。
- 銃規制の緩和議論や安全保障面の強硬姿勢など、右派的要素も取り入れ、治安維持を強調。
外交政策:自由貿易推進と対米接近
- 米国との良好な関係強化を重視。ドル化とも関連し、アメリカとのパートナーシップを深める姿勢。
- ブラジルやメルコスール(南米共同市場)との関係は、経済協力の観点から現実路線を探る一方、中国やロシアとの距離感は調整が課題となる。
ピンクタイド(Pink Tide)の思想・背景
中南米における左派的潮流
- 2000年代から中南米各国で広がった、社会福祉政策や国有化政策を重視する流れ。
- ベネズエラのチャベス政権、ボリビアのモラレス政権、ブラジルのルラ政権、アルゼンチンのキルチネル政権などが代表例。
社会福祉・再分配政策の強化
- 貧困層への支援を拡充し、格差是正を図った。
- 教育や医療への政府支出を増やし、国民の基礎的生活水準の底上げを目指す。
反米・独自外交路線
- かつての米国依存から脱却を試みる国が多く、国際的には「多極化」や「南南協力」を掲げる傾向。
- 一方で、国有企業拡大や補助金政策による財政難・汚職問題などに苦しんだケースも見られる。
ミレイ大統領の政策とピンクタイドの比較
革命的や躍進であると賞賛されることの多い彼の政策ですが、もちろん一長一短あるわけです。
対象 | メリット | デメリット |
---|---|---|
ハビエル・ミレイ |
|
|
ピンクタイド |
|
|
リバタリアン的な思想色の強いミレイ大統領。
税金の9割を削減といっていますが、それは同時に社会保障や福祉の面は国民に自己責任を強いるということにもつながるわけですよね。
これはもう各個人の考え方次第であるわけです。
日本では世界的に類を見ないレベルの高税率国ではありますが、こちらも生活保護や高額医療制度や医療保険等を受けられて幸せを感じる人もいれば、俺は病気もしないし、セコムなどの民間に警備してもらっているし、働いても働いてもほとんどが税金で持っていかれると考える人もいるわけです。
当然ピンクタイト的な思想を持っている国民からすると、反発しますし、リバタリアン思想の方にとっては、非常に住みやすい国になっていっているとも言えます。
また、ミレイ大統領自体は就任直後に病院の無償化をやめるといっており、これまた国民の多くの反感を買っていました。
一時期はミレイ大統領自体が人々のNGワードのような状態となっており、国内メディアはミレイ大統領の政策自体を圧政として報道するばかりで、世間の感情論を高めていた時期もありますし、現在でも、次の選挙まで、任期満了までの我慢であると感じている国民はたくさんいることも事実です。
また、病院の無償化そのものを誇りに感じている国民も多く、次の選挙までにこの暴挙(無償化の解消)をなんとか阻止しなければ・・・と考える人もたくさんいます。
やはり国際社会からの評価と現地での肌感覚での国民の評価は分かれていると言えますし、それは国内の偏ったメディア報道から誘導されている部分も多分にあることでしょう。
2025年以降これからのアルゼンチン
日本では先日はじめて財務省解体デモが行われており、ようやく増税ブームが止まる前兆が感じらますし、同時に脱税した65人の議員が全員不起訴となるニュースも取り上げられ、いよいよ税金そのもののあり方が問われるような時代になってきました。
トランプ政権の中でも日本の財務省に関する問題は取り上げられているという噂もあり、トランプ政権下で日本がこれからどう変わっていくのか?非常に興味深いところではあります。
そんな中で大統領制度ならではの権限で、ほとんどの税金を廃止し、省庁を廃止し、徹底して無駄を省き、大幅な変化の時を迎えています。
リバタリアン思想の強いミレイ大統領ですから、今後は、病院の無償化も廃止し、不安定なアルゼンチンペソも本当に廃止するかもしれません。
というのも、ミレイ大統領自身がビットコインに積極派であり、トランプ大統領と足並みが揃っていると言えるわけです。
トランプ大統領がなぜビットコインにここまで力を入れているかというと、様々な憶測があるわけですが、現状のFRBを主体とした通貨発行権の廃止を目論んでいるのではないか?と筆者は考えているわけです。
ビットコイン本位制経済?
ビットコインをはじめとした暗号通貨が2025年を境に世界中で使われだすというのは、すでに織り込まれたストーリーとなっていることでしょう。
例えば、これまで国際送金や国際取引で常識的に使われていたSwiftというシステムは、民主党政権下のアメリカが中心となって展開していったロシアウクライナ戦争の最中、ロシアでの使用が停止となっていました。
これにとって変わるものがXRPというシンボルで人気のリップルです。
また、ビットコインは取引そのものには不向きであるというシステム構造にはなっていますが、トランプ氏の思惑としてはビットコインをゴールドの代わりとしてその貯蔵量に応じた通貨発行を行うシステムを再構築しようとしているのではないか?とも考えています。
それはトランプ政権がビットコインの取得準備金を政府として用意していることからも想像することができます。
現状で、再びゴールドを主体とした金本位制度で米ドルを発行するとなると、アメリカはどう考えても不利になるわけです。
ブラジルやアルゼンチンの海底金脈をはじめとした中南米がゴールドの採掘には圧倒的に有利に働くからです。
そういう意味では地政学的に依存しない且つ最大許容量の限られているビットコインを本位とした米ドルの発行がもっとも安定的且つ平等に世界経済を牛耳れるという仕組みがトランプ氏の中で構想として存在しているのではないか?と考えるわけです。
それはミレイ大統領も然り、通貨発行の軸をビットコインにもっていくことで経済の安定化を図ろうと考えているのかもしれません。
実際にアルゼンチンでは2000年代に入っても、アルゼンチンペソの造幣技術が低いこともあり、周辺地域のマフィアが実際の造幣装置を使って偽札を製造していたり(なので完成した紙幣は実質本物)とインフレやハイパーインフレをいうレベルの話を超越した状態も存在していました。
現代では実物で紙幣を見るということがほとんどなくなってきており、デジタル管理される時代だからこそ、ブロックチェーンを軸とした通貨発行が必須となってくるのかもしれません。
ただし、これはまだまだ先の超マクロ経済のお話だと思います。
ミクロでは投資、トレードを政府主導で行い、財政の足しにする。
これは世界的に見れば政府の資金で運用し財政に当てていく流れは常識となっています。
日本でも年金基金が巨額の年金を運用しています。
これからの治安
アルゼンチン、もっとマクロでは南米全域において、やはり日本人が最も恐れるのが治安の面でしょうか。
日本人でも多くの方がアルゼンチンを初め、南米エリアで犯罪に巻き込まれており、死者も多数出ています。
ミレイ政権で財政の正常化が起これば起こるほど、リバタリアン思想に耐性のない貧困層の反発はますます増えていくことでしょう。
また、税制の縮小に伴い、警察や治安維持に関わる業界の弱体化はある程度する無ことになる可能性があります。
こちらは2年前の暴動が起こる直前の様子ですが、やはりこの辺りはリバタリアン政治では自己責任論が強くなってきますし、受けられない医療は=稼いでいないからだという論理が常識となっていくことでしょう。
いいか悪いかは賛否あるかと思いますが、アルゼンチン人の富裕層はやはり現状限られているわけであり、現段階では反発は強くなっていくでしょう。
明るい未来が存在するとすれば・・・
ただ、この反発がなくなり、ミレイ大統領が賞賛される未来があるとすれば、「多額の税金をなくすぞ!なくすからお前ら、徹底的に稼げ!稼いで稼いで稼ぎまくるんだ!」という未来です。
ドバイなんかがそういう状態ですよね。
税金はGDPを下げる巨大な心理ブロックになっていることはいうまでもなく、もちろん日本の財務省の人々もわかっていてやっていると想像できるわけですが、このブロックが外れると人びとは思いっきり稼ぐことができるわけです。
また、インサイダーにならない程度にミレイ大統領は国民に投資先を示唆していく、または現在すでに示唆しているのかもしれません。
それをキャッチして国民全員が国際的に相対して富裕層になっていく、且つ税金を吸い取られない。
こういうループを描くことで鬱病が減り、犯罪が減り、より富のループが生み出されるという経済学者ならではの理論がそこにはあるのかもしれません。
家政婦の時給が日本円で数万円、且つフェラーリが乗り捨てられているドバイで犯罪は起こりにくいのは誰が見ても明らかですよね。
南米ではもっとも早く、ビットコインのETFを承認したミレイ大統領です。
また、貿易関係含めて、どことどのような取引を政府がしていくのか?
どこの国とどんな政策を進めていくのか?
をかなり明確に明言しているミレイ大統領。
もしかすると、「おい、お前ら、ここに投資するんだぞ!そうすれば金持ちになれるからな!しかも税金は取らない!だから稼げるだけ稼ぎ倒すんだ!その代わり医療や福祉は自腹でやってくれ、健康的に稼ぐんだぜ!グッドラック!」
というメッセージを国民に向けて常に発しているのかもしれませんね。