インカ帝国の歴史と暮らしを紐解く鍵

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未だ多くの謎に包まれているインカ帝国について。

当然日本の世界史で学べる範囲も限られていることもあり、フォルクローレを紐解くためにインカ帝国に触れないわけには行きません。

この記事を担当:こうたろう

1986年生まれ
音大卒業後日本、スウェーデン、ドイツにて音楽活動
その後金田式DC録音のスタジオに弟子入り
独立後芸術工房Pinocoaを結成しアルゼンチンタンゴ音楽を専門にプロデュース
その後写真・映像スタジオで音響担当を経験し、写真を学ぶ
現在はヒーリングサウンド専門のピアニスト、音響エンジニア、フォトグラファーなどフリーランスのマルチメディアクリエーターとして活動中
当記事ではアルゼンチンタンゴを知るためのコアな知識を考察していきます

日本語で記された資料もわずかなため、現地取材をと・・・その前に、デスクで収集できる情報はしっかりと記事にまとめていきたいと思います。

実は存在する2つの鍵

インカ帝国の実態や暮らしの様子を紐解く鍵が全くないわけではありません。

紐解く鍵番外編としてシェアさせていただきたいアンデス社会史が専門の歴史学者で東京大学大学院総合文化研究科教授の網野徹哉先生の書籍によると、主に2つの資料から紐解けると書かれています。

インディオ社会史

クロニカ

一つ目の鍵がクロニカと呼ばれる資料。

16世紀〜17世紀のスペイン人の記録者がまとめたインカ帝国の資料です。

クロニカをまとめるスペイン人記録者のことをクロニスタと呼びます。

このクロニスタがインカの貴族や土着文化をまとめた資料は大きな鍵となります。

ここにはインカ帝国の様子、儀礼や儀式、国のシステムに関わることが記されています。

当然資料はスペインに残っていますし、コンキスタドール(征服者)側の視点で書かれていますので注意が必要です。

今日においてもまず第一に参看されるべき資料価値をもつが、そこから抽出されるインカ社会像はえてしてモノリシックなものになりがちである。
それをローカル社会の視点から修正し、地方支配の実像に迫ることを可能にするのがいわゆる『地方文書』と呼ばれる行政・司法文書であり、植民地時代に入っておこなわれた地方巡察や訴訟の記録などを通して、インカ帝国の地方レベルにおける支配の実質を把捉することが可能となる。

インディオ社会史:網野哲哉

地方文書

網野先生もおっしゃられています、地方文書。

アルゼンチンの北部はインカ帝国の中央都市からも近かったこともあり、首都ブエノスアイレスとは食文化も音楽文化も大きく違ってきます。

私としても、北部のフォルクローレを知ることで20世紀の商業文化の波に流されていない古来の音楽を発見、または感じられるのではないか?という強い優位性を推測しているわけです。

これら現在ではアルゼンチンの北部となっている地域の地方文書なども存在しているとすれば、古来文化に触れる一つの鍵になるといえます。

貴重な日本語書籍

日本では網野哲哉先生がインカ帝国に関して第一人者であり、網野先生の書籍から学ぶことは多く、現地取材の前にすべての書籍に目を通しておく必要があります。

著書

アンデス世界―交渉と創造の力学

南北アメリカの歴史 (放送大学教材)

トリビア:人類最古の歴史書

ちなみに人類最古の歴史書と言われているのがヘロドトス(紀元前484年頃 – 紀元前425年(正確には不明))の著した、ペルシア戦争を中心とした歴史書で、ヘロドトスは歴史の父との異名も持っています。

これは、ハリカルナッソスの人ヘロドトスの調査・探求(Ἱστορίαι ヒストリエー)であって、人間の諸所の功業が時とともに忘れ去られ、ギリシア人や異邦人(バルバロイ)が示した偉大で驚嘆すべき事柄の数々が、とくに彼らがいかなる原因から戦い合う事になったのかが、やがて世の人に語られなくなるのを恐れて、書き述べたものである。

ヘロドトス、『歴史』巻1序文、桜井訳

古事記

日本の歴史書〜今の古事記が完成した経緯
日本にも歴史書は存在し、日本最古の歴史書といえば古事記が有名です。
現在原本は存在せず、写本が残っているのみ。
中大兄皇子(天智天皇)らによる蘇我入鹿暗殺事件(乙巳の変)に憤慨した蘇我蝦夷は大邸宅に火をかけ自害。
この時に『天皇記』をはじめ、たくさんの日本の資料が失われたと言われています。
『国記』は難を逃れて天智天皇に献上されたとされていますが、現存していません。
壬申の乱後に天智天皇の弟である天武天皇が即位し、『天皇記』や焼けて欠けた『国記』に代わる国史の編纂を命じました。
当時28歳の稗田阿礼が任命され、『帝紀』『本辭』などの文献の誦習を開始。
その後、太安万侶が『帝皇日継』(天皇の系譜)と『先代旧辞』(古い伝承)を編纂し『古事記』を完成させました。

まとめ

歴史は勝者によって作られるとはよく言いますが、アンデス文化、インカ帝国など含めてラテンアメリカの歴史は少なからず西洋の思惑が反映されていることと思います。

ピサロやコルテスがスケープゴートな可能性を考える〜歴史は勝者によって作られる

わずか数百年前のことではありますが、当時の生活や真実を知ることはかなり難しいでしょう。

しかし、日本から遠く離れた南米大陸の文化や歴史を想像することで私たち日本人が主観的に体感する人類史に新たな光が差し込むかもしれません。

青いタンゴ礁
青いタンゴ礁編集長
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