高貴なる哀愁

タンゴ礁は珊瑚礁のごとく
かつてブエノスアイレスの港町で産声を上げたその音楽は
荒々しく、どこか危険な香りを纏っていました
しかし、歴史はタンゴに数奇な運命を用意していました。
海を渡り、パリの社交界へ
そこでタンゴは、王侯貴族や芸術家たちに愛され
洗練という名のドレスを纏うことになります
「燕尾服を着た野獣」
そう形容されるように
タンゴは世界中を旅する中で
野生の情熱を内包しながらも
高度な様式美と、知的な駆け引きを要する
「高貴な室内楽」へと進化を遂げたのです
バンドネオンの蛇腹が描く、幾何学的な旋律
ピアノとヴァイオリンが織りなす、静寂と爆発の対話
それは、ダンスの伴奏という枠を超え
椅子に深く腰掛け
ワイングラスを傾けながら
対峙すべき芸術へと昇華していきました
日々の喧騒から離れ自分の内面と向き合いたい夜
遠い異国の風を感じながら、思索に耽りたい午後
クラシックでもなく、ジャズでもない
伝統だけを守る民族音楽でもない
人生の酸いも甘いも噛み分けた大人だけに許される
複雑な風味を纏った極上のBGMがここにあります
アルゼンチンの風を、あなたの書斎へ
海に潜らなければ美しい珊瑚礁を見ることはできません
タンゴも一見すれば、ただただ美しい水面が
煌びやかに輝いているだけのように見えます
しかし、いざ潜ってみるとどうでしょう
そこには勇気を出して潜ってみた物だけが見ることのできる
摩訶不思議で神秘的な世界が広がっていることでしょう
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