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ブエノスアイレスの夜、石畳の路地から漏れ聞こえるバンドネオンの音色。アルゼンチンを訪れたなら、本場の「タンゴショー(Cena Show)」は避けて通れない通過儀礼であり、魂を震わせる体験です。
しかし、現地には数えきれないほどの「タンゲリア(タンゴハウス)」が存在し、中には観光客向けの安直なショーも少なくありません。
今回は、現地を知り尽くした筆者が、音楽的クオリティ、ダンサーの技術、そして空間の美学という観点から、タンゴマニアも納得する「本物」の5軒を厳選しました。
- 歴史の重みを知る El Viejo Almacén
- フォルクローレとの饗宴 La Ventana
- 最高級の妖艶さ Rojo Tango
- 映画の世界に浸る Bar Sur
- 音楽ファンの聖地 Torquato Tasso
失敗しないタンゲリアの選び方
予約の前に、まずは「自分が何を求めているか」を明確にしましょう。ブエノスアイレスのタンゴハウスは大きく2つのスタイルに分かれます。
1. 圧倒的エンタメ「ショー型」
ブロードウェイのような大規模なステージ、豪華なオーケストラ、アクロバティックなダンス。初めてタンゴを見る方や、華やかな夜を過ごしたい方に最適です。食事(アサード)付きのプランが一般的です。
2. 親密な空気感「バー型」
客席と演者の距離がゼロに近い、小規模な空間。ダンサーの息遣いや衣装が擦れる音まで聞こえます。派手さはありませんが、タンゴ本来の「内省的な情熱」を肌で感じたい玄人向けです。
厳選!ブエノスアイレスのタンゴライブハウス5選
El Viejo Almacén
エル・ビエホ・アルマセン|歴史と伝統の最高峰
1969年創業、サン・テルモ地区の角地に佇む「古い倉庫(Almacén)」の名を持つ伝説的な店。エドムンド・リベロによって設立されたこの場所は、タンゴの歴史そのものです。
最大の特徴は「正統派」であること。現代的なアレンジを極力排し、トラディショナルなタンゴを忠実に再現する姿勢は、世界中のタンゴファンから信頼されています。料理の質も安定しており、失敗のない一軒です。
| エリア | サン・テルモ (San Telmo) |
|---|---|
| スタイル | ショー型(中規模・正統派) |
| おすすめ | 初めての方、歴史を感じたい方 |
La Ventana
ラ・ベンターナ|アルゼンチン文化の万華鏡
歴史的建造物をリノベーションしたエレガントな空間。La Ventanaの魅力は、タンゴだけに留まらない「アルゼンチン音楽の多様性」にあります。
バンドネオンの響きに酔いしれた後は、北部のフォルクローレ音楽、チャランゴの哀愁ある音色、そしてガウチョ(カウボーイ)による勇壮なパフォーマンスまで。エンターテインメント性が高く、飽きさせない構成は見事です。
| エリア | サン・テルモ (San Telmo) |
|---|---|
| スタイル | ショー型(エンタメ重視) |
| おすすめ | フォルクローレも聴きたい方 |
Rojo Tango
ロホ・タンゴ|最高級ホテルの妖艶な夜
プエルト・マデロの最高級ホテル「Faena Hotel」内に隠された、深紅(Rojo)のベルベットに包まれた異空間。
ここは単なるショーではなく「体験」です。客席は極めて近く、選りすぐりのトップダンサーたちがアバンギャルドかつ官能的なダンスを披露します。シャンパンを片手に、退廃的でラグジュアリーな「大人のブエノスアイレス」に溺れたいなら、ここ以外に選択肢はありません。
| エリア | プエルト・マデロ (Puerto Madero) |
|---|---|
| スタイル | ラグジュアリー / キャバレー |
| おすすめ | カップル、新婚旅行、予算を問わない方 |
Bar Sur
バル・スール|映画のワンシーンの中に
ウォン・カーウァイ監督の映画『ブエノスアイレス(Happy Together)』のロケ地としても知られる、伝説的なバー。
ここには派手な照明もマイクもありません。あるのは、市松模様の床と、数組の客、そして目の前で奏でられる生音だけ。深夜まで営業しており、ダンサーがテーブルの間を縫うように踊る親密さは、まるで夢の中にいるようです。
| エリア | サン・テルモ (San Telmo) |
|---|---|
| スタイル | バー型(超小規模) |
| おすすめ | 映画ファン、ディープな夜を好む方 |
Torquato Tasso
トルクアート・タッソ|音楽ファンの聖地
もしあなたが「ダンス」よりも「音楽そのもの」を愛するなら、迷わずここへ。
ここは観光客向けのパッケージ化されたショーではなく、日替わりで実力派ミュージシャンや大御所歌手が出演する「本格的な音楽ライブハウス」です。地元のタンゴ愛好家たちが集まり、ワインと共にじっくりと演奏に耳を傾ける。そんな「本来のタンゴの楽しみ方」がここにあります。
| エリア | サン・テルモ (San Telmo) |
|---|---|
| スタイル | 音楽ライブハウス(コンサート) |
| おすすめ | 音楽ファン、リピーター |
知っておきたい予約とマナー
ディナーショーか、ドリンクのみか
多くの店で「Cena Show(ディナー付き)」と「Solo Show(ショーのみ)」が選べます。良い席(ステージ寄り)はディナー客に割り当てられる傾向があるため、予算が許せばディナー付きを推奨します。移動の手間も省け、アルゼンチンビーフとワインを楽しみながら開演を待つ時間は格別です。
服装(ドレスコード)について
「スマートカジュアル」で問題ありません。男性なら襟付きのシャツ、女性ならワンピースなどが好ましいです。Tシャツや短パンは避けましょう。現地のポルテーニョ(ブエノスアイレスっ子)にとって夜の外出はハレの場です。少しお洒落をしていくことで、その場の空気に溶け込めます。